このページの本文へ移動
生産技術

低温弁シール部の簡易修理治具

1. はじめに

初期に建設されたLNG基地の低温弁や配管フランジ継手には、ガスケットが多く使用されています。このガスケットは長期の使用により、シール性能が低下していくことが知られています。
そこで万一の漏えいに備え、設備を運転した状態で、容易に取付けることができるカバーを開発しましたので紹介します。

2. 開発の概要

(1)開発の経緯

経年劣化などにより低温弁や配管フランジ継手の「シール部」に使用されているガスケットに不具合が生じた場合、工場の操業に影響を与えたり、内部流体のパージが必要になるといった問題が生じます。
この課題に対応するため、低温弁や配管フランジ継手の「シール部」の信頼性を確保できるカバーの開発を行いました。

(2)開発の目標

極低温・高圧プラントに設置されている低温弁や配管フランジ継手の「シール部」を外部から密閉することが可能で、恒久修理に対応が可能であることを開発の目標としました。

(3)取付対象

LNGの受入れ、払出ライン(通液状態)における、「低温弁ボンネットフランジ継手部」および「配管フランジ継手部」を対象として開発しました。

3. 開発品の特長

項目 特長
材質 【カバーにアルミニウム合金を採用】
  1. 低温時の収縮効果によるシール性能が向上
  2. 軽量化による取付施工性が向上
構造

【シール部に増締め可能なパッキン押さえ構造を採用】

  1. パッキン全面に均一な面圧を加えることができ、シール性能が向上(応力緩和低減)
  2. トルク管理(標準化)が可能となり、メンテナンス性が向上(数値管理による標準化)

【フランジ締付ナットを袋ナットに変更(座面ガスケット装着)】

  1. ネジ部、および座面のシール性能が向上
カバー装着
カバー装着
フランジ締付ボルト・袋ナット(座面ガスケット装着)
フランジ締付ボルト・袋ナット(座面ガスケット装着)

4. 装着の手順

低温弁装着 断面図
低温弁装着 断面図
(1) フランジ締付ボルト・ナットの交換 (2) カバー取付
ボルト・ナット交換中 カバー取付中 カバー取付完了
ボルト・ナット交換中 カバー取付中 カバー取付完了
  1. 既設ボルト・ナットを一本づつ取外す
  2. フランジのナット着座面の表面状況確認(傷などが認められる場合は修正)
  3. 袋ナットを規定トルクにて締付
  1. 二分割構造のカバーを適正位置に取付
  2. パッキンを挿入
  3. パッキン押え金具を規定トルクで締付
 

5. 開発の効果

保安レベルの向上

漏えいの未然防止、および初期漏えい時の早期対策が可能となり、保安レベルの向上を図ることができます。

他プラントへの展開

開発品の基本構造は、配管フランジ部にも適用できるため、極低温、高圧プラントのみならず、危険物プラントなど幅広い分野へ展開することができます。

コストダウン効果

設備を運転した状態で対策を行うことができるため、工場の操業に影響を与えることなく、かつ配管内の流体に対するパージなどの必要がなくなることから、これらに要する費用が削減できます。

6. おわりに

今回開発した技術により、懸念されるガスケットの経年劣化などによる不具合に対して、対策が可能となり保安レベルの向上を図ることができました。
なお本開発は、平田バルブ工業株式会社との共同開発によるものです。