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サステナビリティ

トップメッセージ

代表取締役社長 増田 信之

グループビジョン実現に向けて第二ステップを始動します

2025年4月に社長に就任した山碕です。私は1986年に入社して以来、営業・財務・企画部門を中心にキャリアを重ねてきました。入社当初に配属された営業部門の最前線では、お客さまと直接向き合う中で、日々のくらしを支えるエネルギーをお届けするという当社グループの仕事の重みと、お客さまからの信頼が当社グループの根幹であるということを肌で感じました。この経験が基となり、単にガスというエネルギーを販売するだけではなく、ガス販売を通じて、地域の皆さまの生活をより豊かに、より快適に、さらには地域社会が抱える課題解決に貢献していくことが当社グループの重要な役割だという考え方に至りました。その後、他部門での経験も重ね、経営に携わる立場になった現在でも、この考え方に変わりはありません。

企画部担当役員の時代には、2022年3月に公表した「東邦ガスグループビジョン」(グループビジョン)とグループビジョン実現に向けた第一ステップである「中期経営計画2022-2025」(前中計)の策定に携わりました。カーボンニュートラルへの対応と事業構造の変革が喫緊の課題であった中、当社グループの目指す姿やその実現に向けた道筋の明確化に関与できたことは得難い経験となりました。

第一ステップである前中計の目標達成に目途がついたことを踏まえ、2025年3月に「中期経営計画2025-2027」(新中計)を公表しました。これはグループビジョン実現に向けた第二ステップとなるものです。この新中計を着実に実行する中で、事業構造の変革を加速し、企業価値を向上させるとともに、当社グループを取り巻くステークホルダーの皆さまに対して、バランス良く価値を提供していく舵取りを行うことが、社長としての私の使命であると考えています。

取り巻く経営環境を捉えた事業構造の変革を推進します

グループビジョンや新中計の達成に向けて、当社を巡る中長期的な環境を見通すと、カーボンニュートラルの進展や国内の人口減少など、エネルギー需要構造に影響をもたらす事象も予想されています。これらは当社にとってリスク要因となり得る一方、カーボンニュートラルの進展は、新たなエネルギーの提供や、エネルギー周辺のサービスを拡大させるチャンスでもあると考えています。こうしたリスクをチャンスと捉え、成長につなげるために、新中計ではコア事業※1から戦略事業※2への経営資源配分の見直しを加速し、事業構造の変革を推進します。

コア事業では、ガス事業を中心にお客さまの数を増加させながら、IT・AIの活用を通じて着実に効率化を進めることにより、計画した利益やキャッシュ・フローを確保します。また、戦略事業においては、電気事業、海外事業といった、新たな柱となり得る事業の利益拡大に向け、資源配分を強化します。現時点では、戦略事業は投資先行の時期とならざるを得ませんが、当社グループがコア事業で培った強みが活かせる分野などをしっかりと見極めつつ、将来の利益成長に資する投資を進めます。あわせて、事業別の収益性管理を徹底し、当社の事業ポートフォリオが企業価値の向上に資する状態であるかを定期的に点検するため、ROICによるモニタリングを実施します。

さらに、企業価値の向上に向けては、事業構造の変革による利益成長と並行して、株主還元などを通じた適切な資本構成の構築を進めていくことが必要だと考えています。2024年度は、当社において過去最大の自己株式取得を実施しました。新中計に沿って、利益成長とともに累進的な増配を目指すことに加え、自己株式の取得を進めて自己資本の最適化を図ります。

コア事業を中心に培った信頼を基盤に戦略事業を拡大します

2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、エネルギーの安全保障や電力需要の増加などの情勢変化を踏まえ、環境性に偏らないバランスのとれたS+3E※3の実現に向けた方向性が示されました。このうち、天然ガスについては、燃料転換などを通じた天然ガスシフトが進むことで環境負荷低減に寄与するとともに、カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源として位置付けられています。また、LPガスについても、可搬かつ貯蔵が容易な分散型エネルギーであり、災害時には避難所などの生活環境向上にも資する重要なエネルギー源として位置付けられました。当社グループの大きな柱であるコア事業の都市ガス事業とLPガス事業は、引き続きこの流れに沿い、天然ガスの普及拡大やLPガス事業の規模拡大などを進めるとともに、業務の高度化・効率化やLNG調達力の強化などを通じてコア事業の収益性を一層高め、安定的にキャッシュ・フローを創出します。

一方、次代に向けた利益成長の原動力となるのが戦略事業です。電気事業では、競争力のある電源の構築や再エネ開発の推進に取り組むとともに、お客さまへの電気販売や電力サービスの提供を通じて、安定的な利益創出を目指します。海外でのエネルギー事業は、アジアや北米などを中心に、コア事業で培った知見やノウハウを活かすことのできる天然ガスや再エネの普及拡大などに取り組みます。また、地域価値創造ビジネス群として、地域のくらしやビジネス、自治体などとの共生につながる課題解決型のビジネスを推進し、地域社会と当社グループ双方の持続的成長を実現していきたいと考えています。

先に述べたとおり、コア事業にて安定的なキャッシュ・フローを創出しつつ、その知見・ノウハウやお客さまとの接点などを基盤として戦略事業を拡大します。これらを通じ、当社グループが貢献できる「地域」を拡大し、お客さまに提供できる「豊かさ」を広げていきます。

サステナビリティ経営の推進により当社グループの持続的成長を実現します

 当社グループは、長期的な企業価値向上に向け、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3つの要素を重視した取り組みを推進してきました。環境問題が深刻さを増し、また、企業に対する社会的責任への要求が高まる中においては、この取り組みを一層強化することにより、持続可能な環境・社会の実現と事業の持続的な成長を両立する経営、すなわち、サステナビリティ経営を推進していきます。

環境(E)面での取り組みとして、地球全体の喫緊の課題である環境負荷の低減に向けた活動は、当社グループにとって最重要課題の一つですが、2050年のカーボンニュートラル実現に向けては2つの重要なポイントがあると考えています。一つ目は、カーボンニュートラルは今日や明日といった短期間で達成できるものではないということです。カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発などを進めると同時に、足元のCO2排出量の削減に貢献する天然ガスの普及拡大などにより、累積排出量の削減にも力を入れる必要があります。二つ目は、カーボンニュートラルを実現する道筋はまだ定まっていないということです。エネルギー供給において環境負荷低減はもちろん重要ですが、経済性や安定性もクリアする必要があり、現時点では、どれか一つの対策に決め打ちするのではなく、複数の道を模索しながら、最適な道を見つけ出すことが重要と考えています。我々は、将来的なe-methane(e-メタン)の実装によるガスそのものの脱炭素化に加え、水素の普及、CO2の回収や利活用など、当社グループ一体となってカーボンニュートラルへの円滑な移行に向けた幅広い取り組みを推進していきます。

社会(S)面では、地域社会の活性化への貢献は、「事業活動に留まらず、地域の皆さまとの深い信頼関係を築き、そしてともに未来を築き上げていく」という当社グループの企業文化に通じます。当社グループの社員一人ひとりが「地域に貢献したい」という思いを抱いており、この地域を思う気持ちは、当社グループの事業活動の原動力でもあると認識しています。これからもこの企業文化をしっかりと受け継ぎ、地域社会が抱える課題の解決に貢献していきます。

ガバナンス(G)面では、取締役会の実効性向上やリスク管理体制の強化、監督・監査機能の強化などを通じて、引き続きコーポレート・ガバナンスの強化に努めます。コンプライアンスに関しては、お客さまからの信頼が最も重要な事業基盤である当社において、独占禁止法違反の事案があったことを極めて重く受け止めており、二度と起こさないよう再発防止を徹底します。ステークホルダーの皆さまとの間で築いてきた信頼を損なわないよう、自らが先頭に立って、各種法令の遵守徹底に努めます。

社員一人ひとりの成長を支え、社員エンゲージメントの継続的な向上に取り組みます

当社の持続的な成長の源泉は、社員一人ひとりの活躍にあると考えています。社員が自らの仕事に誇りとやりがいを持ち、日々の業務を通じて達成感や成長を実感できることが、企業として新たな価値を創造し続けるための最も重要な基盤です。

このため、社員エンゲージメントの向上を重視するとともに、多様な個性や価値観がイノベーションの源泉であると捉え、お互いを認め合い、その個性を活かし合える組織風土の醸成に努めています。

た、社員の能力を最大限に引き出すため、個々の強みに合わせたキャリア開発支援や、挑戦を後押しする制度の拡充を進めるほか、心身ともに健康で、長期的に能力を発揮できるよう、柔軟な働き方の推進や快適な職場環境の整備にも注力するなど多面的な支援を行います。

加えて、社長として、社員には、現状に安易に満足することなく、徹底的に考え抜き、困難に果敢に立ち向かう姿勢を身に付けてほしいと思っています。近年、当社グループにおいても挑戦への意識が高まっているという実感がありますが、まだ道半ばです。これまでも社員には、「何事もやってみなければ分からない」、「やるからにはしっかりと信念と責任を持ってやろう」と伝えてきましたが、今後もより多くの社員とコミュニケーションを取る中で、「挑戦なくして成長なし」という考え方をしっかりと根付かせていきたいと考えています。

これらの取り組みを通じて私たちが目指すのは、「社員の成長が会社の成長につながり、会社の成長が社員のさらなる成長を促す」という、持続的成長に向けた好循環です。社員エンゲージメントを高め、一人ひとりが活躍できる環境を築き、各自が挑戦を続けること。それが企業の成長につながり、最終的に、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまへの提供価値を最大化するものと考えています。

ステークホルダーの皆さまに向けて

当社グループの普遍的な価値観は三位一体の精神であり、「株主の皆さま」、「地域・お客さま」、「働く仲間」の三者が、それぞれに利益を享受できることが必要不可欠であるとの考え方です。この当社創業時から受け継いできた「お客さま、株主、従業員の共存共栄」、すなわち、多くのステークホルダーの皆さまに対するバランスに気を配るという点は、今後も経営の拠り所の一つにしたいと考えています。株主の皆さまからの健全なご期待に応えるべく企業価値の向上に努め、それが地域・お客さまへのより良いサービス提供へとつながり、ひいては働く仲間の成長を促す。それがさらなる企業成長の土台になると考えています。

当社グループは多くのステークホルダーの皆さまの温かいご支援により、これまで成長を続けてきました。この深い信頼とご期待に応え続けることが、私が経営者として最も大切にしていきたいことです。新中計の達成、さらにはグループビジョンの実現に向けた取り組みを進める中で、当社グループがステークホルダーの皆さまから信頼され、頼りになる存在であり続けられるよう、真摯に企業経営に向き合っていきます。ステークホルダーの皆さまにおかれては、事業構造を変革し、次の成長ステップに踏み出した当社グループにご期待いただきながら、今後とも変わらぬご支援をお願いいたします。

  1. 都市ガス・LPガスなど、長期安定的な収益基盤としてキャッシュ・フローを創出する事業
  2. 電気・海外・エネルギーサービスなど、中長期的な成長を牽引する事業
  3. 安全性の確保(Safety)、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合性(Environment)を同時に達成することを目指す日本のエネルギー政策の基本的視点

2025年8月