生産技術
ガス差圧発電システム
1. はじめに
都市ガスの供給過程では、利用用途に応じてガバナ(整圧器)などで圧力を減圧しています。
この減圧時のガスの膨張エネルギーを活用する設備として、ガス差圧発電設備がありますが、これまでは、タービン、発電機、その他付帯設備などをそれぞれ設置することが必要であり、建設費やスペースの問題から利用が進んでいませんでした。
本システムでは、タービン・発電機一体型(密閉構造型)の採用により、従来方式と比較して大幅な省スペース化およびコストダウンを実現しました。なお、本開発は環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に採択されました。
2. 開発品の特徴
今回開発したガス差圧発電設備は、一つの躯体の中にタービンと発電機を配置し、軸封部が無い構造となるため、外部へのガス漏洩のリスクが無い安全な構造です。また、軸受は非接触型のマグネティックベアリング(磁気軸受)を採用することで高速回転を許容するとともに、メンテナンスフリーで低騒音・低振動となることから、建屋も不要とできます。
これらの特性から主要部のコストを従来の70%以下、設置スペースを50%以下にすることが可能となりました。


表1.ガス差圧発電設備の諸元
項 目 | タービン発電機 (Tag.841) |
タービン発電機 (Tag.842) |
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発電性能 | 125kW | 280kW |
ガス流量(定格発電時) | 約7,500m3N/h | 約16,200m3N/h |
回転数 | 25,000rpm | |
設計圧力 | 3.0MPa | |
圧力比 | 約2.33 (入口圧力:約2.1MPa、出口圧力:約0.9MPa) |
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温度降下 | 約40℃ |
3. 実用機の導入
設備主要部面積は約7.5m2と省スペース化を実現した実用初号機を東邦ガス 四日市工場のバルブステーション内に設置し、2023年5月より運用を開始しました。
本設備の導入により年間約900tのCO2排出削減を見込んでいます。

4. おわりに
今回開発し、導入したガス差圧発電設備の有効活用を通して都市ガス事業の効率化を図るとともに、ガス差圧発電設備の普及促進に寄与することで、環境負荷の低減に貢献してまいります。