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ESGへの取り組み

トップメッセージ

「中期経営計画2022-2025」のテーマに沿って取り組みを進める

代表取締役社長 増田 信之

当社は、2022年6月に創立100周年を迎えました。この節目を迎える前後では、当社の100年の歴史に思いを巡らせる機会も数多くありました。改めて、当社に関わるすべての人と地域に、心より感謝申しあげます。

2023年度に入ってからは、コロナに対する行動制限が緩和され、社会・経済活動も回復傾向が見られる一方で、ウクライナ情勢の影響は継続しており、経済やエネルギー需給の面で、不確実性が高く先行き不透明な状況が続いています。また、電力・ガスの小売全面自由化による競争環境の変化、カーボンニュートラルの進展によるエネルギー需要構造の変化、デジタル化の進展に伴うお客さまのライフスタイルや価値観の変化、物価の高騰や労働環境の変化など、エネルギー事業者として乗り越えなければならない変化が次々と起きています。ただし、見方を変えれば、新しい可能性や新しいチャンスが広がっていると見ることもできます。

そうした状況認識のもと、当社グループは2022年3月に公表した「中期経営計画2022-2025」に沿って、様々な取り組みを進めています。この中期経営計画は、将来に向けての持続的成長を示したグループビジョンを実現するための第一ステップと位置づけており、「カーボンニュートラルの推進」「エネルギー事業者としての進化」「多様な価値の創造」「SDGs達成への貢献」の4つのテーマに重点的に取り組む方針を掲げました。

私は、株主さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまに対して、この中期経営計画に込めた思いとその実現に向けた取り組みを、IR説明会をはじめ、様々な場面でお伝えしてきました。また、当社グループの社員に対しても、それぞれが目の前の仕事に取り組む中でも、大きな方向性としてこの4つのテーマが常に存在しており、その実現に向けて、グループ一丸となって取り組んでいくことの重要性を繰り返し伝えてきました。

私は、中期経営計画で掲げた目標を“会社が目標にしているもの”と捉えるだけではなく、“自分たちが生活する地域の豊かさにつながるもの”と捉えることで自分事として考えられるようになり、それが社員自身の成長につながって、組織としての力を最大限に引き出すことになると考えています。最近では、その思いが社員の意識まで浸透し、目指す方向性を共有して取り組みを進められていることに手応えを感じています。実際に、私は最前線で働く社員の声に耳を傾けるため、社内の各部署へ定期的に足を運んで、若手も含めた社員とのミーティングを行っていますが、そこで感じるのは、社員一人ひとりの根底に、「地域に貢献したい」という強い思いがあることです。当地域は、東京圏・大阪圏に次ぐ大都市圏であり、かつ自動車産業をはじめとした様々な製造業が集積しており、今後も安定した成長が見込まれる地域です。私たちは、「地域とともに成長していく」という基本姿勢を守りながら、様々なチャレンジを続けて事業領域を拡大し、企業価値の一層の向上を目指していきます。

中期経営計画1年目(2022年度)の振り返り

2022年度を振り返ると、当社の顧客基盤である都市ガス・LPG・電気のお客さま数は、着実に増やすことができました。「可能な限り早期に300万件を達成する」という目標を掲げる中で、2022年度末時点で292万件の実績となっており、順調に進捗しています。一方で、当社の主力事業である都市ガスの販売量は、気温が年間を通じて高めに推移したことや、業務用分野での部品供給不足による生産減などにより、前年度を下回る実績となりました。

収支面では、エネルギー価格が世界的に上昇傾向にある中、都市ガスの原料となる天然ガスについて、長期契約を中心とした安定的な原料調達に努めた結果、経常利益は前期比+119.8%の481億円で大幅な増益となりました。一方で、電気事業については電力調達費の上昇などにより収支が非常に厳しい状況にあり、調達の見直しをはじめ様々なアプローチで収支改善に取り組んでいるところです。

中期経営計画の取り組みテーマ:「カーボンニュートラルの推進」

ガス自体の脱炭素化や水素の普及拡大などに取り組む

当社は、2021年7月に「2050年カーボンニュートラルへの挑戦」を公表し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた具体的な取り組みを進めています。カーボンニュートラルの実現は、今では多くの企業が経営課題に挙げていますが、エネルギー事業者である当社にとって、ガス自体の脱炭素化や水素の普及拡大に取り組むことは、社会的責任を果たすことに直結する重要な経営課題と捉えています。また、お客さまとの接点機会の多さは当社の強みでもあり、エネルギーの供給等を通じてお客さま先における低・脱炭素化の実現に貢献できると考えています。これらの取り組みは、当社グループの持続的成長にとって不可欠なものであり、時間を要する取り組みであるからこそ、一歩ずつ着実に進めていくことが重要です。

ガス自体の脱炭素化に関しては、e-methane(イーメタン)の導入に取り組んでいます。e-methaneとは、グリーン水素等の非化石エネルギーやCO2を主な原料として製造された合成メタンです。LNGの代替燃料としてe-methaneの導入が進めば、社会インフラである都市ガス導管網を有効に活用できることに加え、お客さま側での燃料転換も不要になります。カーボンニュートラルの実現に向けては、いかに環境性と社会的コストのバランスをとっていくかが重要であり、e-methaneは、まさにその現実解となり得るカーボンニュートラルな合成燃料です。あわせて、CO2をリサイクルするために必要な「CO2の分離回収」についても、大学などと連携しながら開発・実証を推進しています。

水素の普及拡大に関しては、水素サプライチェーンの構築に向けて、製造設備の建設、輸送・供給体制の検討、消費に関する技術開発などに取り組んでいます。具体的には、当社の都市ガス製造の主力工場である知多緑浜工場に水素製造プラントを建設し、2024年度までに水素供給を開始する予定です。熱分野やモビリティ用途などにおける水素利用ニーズに応え、知見・ノウハウを有する他社と連携しながら、水素社会の実現に貢献していきます。

その他にも、お客さまのカーボンニュートラル実現を支援するため、コンサルティングからエンジニアリングまでワンストップでサービスを提供する「CN×P(シーエヌピー)事業」を拡大しています。また、電気の低・脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの電源開発・調達も行っています。当社は、カーボンニュートラルの実現に向けて、様々な取り組みを進めていきます。

中期経営計画の取り組みテーマ:「エネルギー事業者としての進化」「多様な価値の創造」

エネルギー分野で安定的なキャッシュフローを確保しながら新たなサービスを展開する

エネルギーシェアの拡大に向けては、お客さま数の増加にこだわっていきたいと考えています。当社は、以前から、家庭用分野におけるくらしまわりサービスや、業務用分野におけるエンジニアリングサービスに力を入れていますが、これらのサービスを広げていくためには、強固な顧客基盤を確保していることが重要になります。エネルギー事業者としての責務である「変わらぬ安全・安心、安定供給の確保」を全うし、お客さまの信頼を得ながら、まずは「都市ガス・LPG・電気のお客さま数300万件」を早期に達成します。

エネルギー分野においては、都市ガスは省エネが進んでいく中でも足元並みの販売量を維持しつつ、LPG・電気の事業規模拡大を成長ドライバーとして、さらなる収益の向上を図っていきます。エネルギー分野で獲得した安定的なキャッシュフローを、戦略事業投資や株主還元にバランスよく配分し、グループ全体としての成長につなげていく方針です。

また、エネルギーの顧客基盤を起点として、新たなサービスメニュー・商材の拡充を進めています。くらし分野としては、会員サイト「Club TOHOGAS」や各種サービスを提供するサイト「ASMITAS」などのデジタル接点を拡大し、様々な生活シーンでお役に立てる存在になりたいと思っています。同様に、ビジネスサポートの分野でも、会員サイト「TOHOBIZNEX(トーホービズネックス)」の拡大に取り組んでいます。これらのデジタル接点を含め、都市ガスを通じたお客さまとのリアルな接点機会を持つ当社の強みを活かし、生活やビジネスを幅広く支える存在になりたいと考えています。

中期経営計画の取り組みテーマ:「SDGs達成への貢献」

幅広い課題に対応して経営基盤を強化する

ESG課題への対応に関しては、2023年2月に、サステナビリティの実現に向けた考え方を「東邦ガスグループ サステナビリティ方針」として制定し、新たにサステナビリティ委員会を設置しました。グループ全体でESG課題への取り組みを着実に推進していきます。

また、社会インフラを支えるエネルギー事業者としては、地域共生の取り組みが重要と考え、自治体との連携にも注力しています。2022年度は、カーボンニュートラルの推進や地域活性化への協力など、自治体との包括連携協定を6件締結しました。当社が地域とともに持続的な成長を目指す中、様々な形で地域に貢献できることを、私自身も大変嬉しく思っています。

中期経営計画に沿って事業領域の拡大を目指す中では、人材マネジメントも変えていく必要があります。専門性を高めるための研修や留学制度の充実、キャリア採用の推進など、新しい取り組みに挑戦できる場を拡大し、その挑戦を支える仕組みの充実化に取り組んでいます。

代表取締役社長 増田 信之

人材マネジメントを支えるものとしては、柔軟な働き方の確保やダイバーシティの推進が重要です。育児や介護等の両立支援策の拡充、男性育休の推進、障がい者雇用の拡大などの具体的な取り組みを進めて、社員エンゲージメントを高めていきます。

ガバナンスの強化については、ステークホルダーから信頼される企業であり続けるため、グループ全体におけるリスクマネジメントの推進や情報セキュリティ強化等の取り組みを進めています。

株式市場との対話を従来以上に丁寧に行う

中期経営計画ではコア事業から戦略事業への経営資源のシフトを掲げていますが、それを支えるものとして、資本政策は非常に重要なものと考えています。資本コストや株価を意識した経営の必要性に関する声が高まる中、株式市場との対話を従来以上に丁寧に行う必要があると感じています。

当社は、現在、中期経営計画期間の経営目標として、収益性については営業キャッシュフロー2,100億円以上、効率性についてはROA3%程度、健全性についてはD/Eレシオ0.6倍程度を掲げています。この目標に沿って取り組みを進めていますが、経営を取り巻く環境が刻々と変化する中、株主さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまの声に常に耳を傾け、経営に活かしていきたいと考えています。

株主還元については、「安定配当を基本とし、機動的な自己株取得・消却を合わせ、中長期的に連結当期純利益の4~5割を目安として実施すること」を基本方針としています。今後、戦略事業関連の投資が拡大する中でも、株主還元の基本方針に沿った対応を進め、企業価値の一層の向上を目指します。

私は、今年の入社式で新入社員に向けた言葉として、ダーウィンの進化論を取り上げました。どんな時代にも、変えずに守っていくべきものがあります。一方で、変化に適応して変わり続けていくことは、企業が持続的な成長を図るために重要です。地域とともに成長していくという基本姿勢を守りながら、様々なチャレンジを続けて事業領域を拡大し、企業価値の一層の向上を目指していく所存です。

2023年7月