はじめに

天然ガス(NG)に液体の液化石油ガス(LPG)を直接注入する液ガス式熱量調整装置において、LPGを微粒化するノズル機構および制御技術をJFEエンジニアリングと共同開発しました。これを適用した「AtoMS(Atomization Mixing System)」は、従来の液ガス熱量調整装置であるベンチュリ方式(以下、「従来方式」)と比較して、ユニット単機あたり約4倍の流量範囲で熱量調整が可能となりました。
実用初号機を東邦ガス四日市工場に建設し、従来方式と比較して低コスト/省スペースを図った上で優れた運用性を実現しています。

写真1.AtoMS全景

写真1.AtoMS全景

開発の概要

高圧で大容量の液ガス式熱量調整装置で多く採用されている従来方式は、最大設計流量の1/ 5(NGターンダウン比、以降同じ)を下回ると、LPGが液の状態で流出する「液だれ」現象が発生する弱点を持っていました。したがって、低流量域の運転を必要とする場合は、大小2系列のユニットを組み合わせる必要があり、切り替え時の制御が難しいことや設置スペースの増大、コストアップとなる課題がありました。
このため、熱量制御性に優れるという従来方式の利点を活かしつつ、1系列のユニットで低流量域でも「液だれ」せずに熱量調整可能な新型の熱調装置の開発を行いました。

図1.液ガス熱量調整装置の運転流量域

図1.液ガス熱量調整装置の運転流量域

「AtoMS」には、本管から分岐したNGをLPG混合部に導入し、LPG液を微粒化するノズルを組み込んでいます。運転負荷に応じて適切に制御されたNGを混合しながらLPG液を噴霧し、低負荷運転時にも確実に微粒化させることで、1系列のユニットで最大運転流量の1/20の低流量域まで運転が可能となりました。

図2.従来方式と「AtoMS」の構造

図2.従来方式と「AtoMS」の構造

実用機の仕様

平成22年度より当社の都市ガス製造工場内に実証試験設備を建設し、複数の微粒化ノズル機構について性能比較試験を実施しました。ノズル形状やNG流量の分配・制御量など、その際に得られた知見をもとに、実用初号機の設計を進めてきました。
平成25年度の伊勢湾横断ガスパイプラインの運用開始に伴い、当社の四日市工場に新型液ガス式熱量調整装置「AtoMS」の実用初号機を設置しました。

表1.「AtoMS」初号機の仕様

項 目 仕 様
型式 液ガス式熱量調整装置
設計圧力 7.0 MPa
運転圧力 約2.5 MPa(当初)
運転流量 7,000~140,000 m3N/h(13A流量)
配管口径 NG/13A:14~16B /LPG:3B
写真2.「AtoMS」初号機の外観

写真2.「AtoMS」初号機の外観

開発の効果

「AtoMS」の採用により、次のような効果が得られています。

(1)工場運用性および送ガス品質の向上

  • 大小ユニット切替運転を行う必要が無いため、ユニット切替時の熱量逸脱リスクを解消しました。
  • 最小運転可能流量が小さいため、設備の起動停止による熱量逸脱リスクを低減しました。
  • すべての運転範囲で低熱量LNGの熱調運転が可能となりました。

(2)建設コストの削減

  • 1ユニット化により、同等性能の従来方式と比較し設備機器点数の削減を図ることができました。
  • ノズルへの異物混入による閉塞のリスクが低減したことにより、配管類の仕様変更が可能となりました。(LPGフィルタからLPGストレーナへの変更、LPGストレーナ下流側のステンレス鋼を炭素鋼に変更)

(3)省スペース化

  • 1ユニット化により、同等性能の従来方式と比較し、建設エリアの削減を図ることができました。
従来方式 AtoMS

図3.設備構成例(上:従来方式、下:AtoMS)

図4.建設スペース比較

図4.建設スペース比較

おわりに

AtoMSは、新技術の開発、優れた性能、他社への採用実績等が高く評価され、平成26年度の日本ガス協会/技術賞の受賞に続き、平成28年には日本ガス協会/技術大賞を受賞しました。
今後、非在来型天然ガス(シェールガス)など低熱量LNGの導入が進むと考えられ、熱調装置の需要はますます高まると予想されます。
こうした中、時間帯によって需要の変化が大きい都市ガスの需要に広範囲の運転範囲で柔軟に対応可能な「AtoMS」は、都市ガスの安定供給に貢献できるものであると考えます。

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