PROJECT STORY 03

OUTLINE

世の中をよくするために。
熱量の共有から生まれた新技術。

東邦ガスが誇るガスパイプラインの保安技術と、
AI技術を駆使した、シリコンバレー発のインフラ設備診断ツール。
そこから生まれたのが「AIによるガス管劣化予測」という新技術だ。
2019年、東邦ガスは、米国カリフォルニア州に本社を構える
水道インフラのイノベイティブ企業「Fracta」と協働して、
既に実用化されていた水道管劣化予測の、ガス管への転用を試みる。
Fracta社との交渉から契約、実証実験、実用化までを先導した
キーパーソンとともに、世界初となる挑戦の軌跡を辿ってみよう。

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PROFILE

河合 克宣

供給部門

導管ネットワークカンパニー
導管企画部 企画グループ 企画チーム
※インタビュー内容、所属は取材当時のものです。

2014年入社

工学研究科、化学・生物工学専攻。配属された供給部門にて現場の工事監理や設計業務を担当した後、導管ネットワークカンパニー設立における組織・事業検討プロジェクトに参画。担当業務と並行して「AIによるガス管劣化予測」を手がける。宅地建物取引士、船舶免許を保有。休日には海釣りを楽しむ。

河合

始動

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  • PIONEERING
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新時代のAI活用技術に
心惹かれて、即行動!

世界初の試みは、一冊の本から始まった。河合が上司から勧められたのは、「クレイジーで行こう!」というFracta社加藤CEOの著書。単身渡米した日本人企業家が、老朽化が深刻な「水道管」の保全に挑んだ1000日の記録だった。読み始めた河合は、AIによって管の劣化度合いを図面上に可視化するという新技術に興味を覚えるとともに、Fracta社の社会的課題に向き合う姿勢にグイグイ引き込まれる。やがて「水道管の劣化予測技術を、ガス管に転用できないだろうか?」と気づき、その実現に大きな可能性を感じたという。河合は本を頼りに、親会社の日本企業を通して、Fracta社の連絡先を入手。即日、国際電話をかけて問い合わせをした。担当者と協議するうちに、理論上はガス管への転用が可能なこと、Fracta社としても水道管に続いてガス管への展開を模索していることが判明する。河合も、上司も、ガス管の劣化予測技術の開発には、東邦ガスが長年にわたって蓄積してきた保守データを有効活用できるのではないかという期待があった。
東邦ガスが保有するガス管は、約30000kmに及ぶ。それまでガス管の保全対策は、過去の知見をもとに、埋設した年代や地震対策の優先度を考慮してマンパワーで推進してきた。一方で、保全対象としていないガス管に劣化が見られるケースも増加傾向にあり、供給部門内で効果的な保全対策を検討しているという背景があった。2カ月後、河合は上司とともに、担当役員ら上層部へ向けて、「AIによるガス管劣化予測」の活用についてプレゼンテーションを行う。当日はFracta社の加藤CEOや、開発担当者も同席し、熱弁をふるった。

協議

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思いもよらぬ「など」の壁。
違いを成長の糧にする。

当時の東邦ガスには、まだ馴染みのなかったAI。果たして信頼できるものなのか、アメリカの水道管と日本のガス管という異なる環境下でも、精度の高い予測が可能なのか。一部にはそうした懐疑的な意見も出たが、高度な劣化対策が可能となることに期待も寄せられた。何よりもFracta社の技術に対する自信、社会に貢献したいという溢れ出る熱量に、一緒に取り組んでみたい!という共感を得られたことが、実証実験の実現に弾みをつけた。
こうして社内協議を乗り越えた後、今度は契約に関する交渉が難航する。日米のビジネス文化の違い、大組織とベンチャーとの企業文化の違いに、河合は頭を抱えたという。多面的にリスクを検討する東邦ガスと、迅速な意思決定を要求するFracta社とでは、スピード感がまるで違った。契約書の締結においては、「など」の表記が思わぬ壁となった。例えば、補償の条件。日本では契約書に条件をすべて列記せず、「~など」と含みをもたせることが慣例となっているが、Fracta社からは具体的なケースをもれなく表記することを求められた。こうした文化の違いになかなか折り合いがつかないなか、お互いの弁護士を交えた協議が続けられた。
河合は心が折れそうになりながらも、なんとか着地点を見つけようと、補償が想定される事象の洗い出しに取りかかった。一つ間違えば、資金面や信用問題において大きなダメージを負うかもしれないFracta社の立場を理解し、歩み寄りが必要だと考えたのだ。

開拓

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まずはやってみる。
それなくして未来は拓けない。

河合は、Fracta社が希望する期限内の意思決定に努め、補償条件も契約書にすべて明記した。双方が歩み寄る形で、2019年7月、日本語と英語の両言語による契約が取り交わされる。河合がFracta社に電話をかけてから、5カ月後のことだった。スピード感や文化の違いに戸惑いながらも、迅速に動いた結果、世界初となる技術開発を手がけることができたのだ!
実証実験に入ると、保安、システム、技術研究の担当者が参画し、河合と上司を含めた5人体制に。まず、水道管向けのプログラムを、ガス管向けにカスタマイズすることから着手した。Fracta社とは、ガス管の特徴や保守管理のノウハウなどを情報共有。人口や土壌、建物、交通網など1000以上の環境データと、ガス管の劣化に関する過去20年以上のデータを機械学習させ、次に劣化しやすいガス管を予測する技術を完成させた。この技術を導入することで、保安対策の効果を高められることも実証できた。
実証実験が完了した現在は、得られた予測結果に基づいて、ガス管の交換を順次進めるべく、実務への落し込みを行っている。ガス管の維持管理は、同業他社においても共通の課題だ。Fracta社とは、他社への技術展開において、引き続き良好なパートナー関係にある。さらに水道局と連携して、劣化予測結果の情報交換や、その情報をもとにした同調工事も計画中。これらの取り組みが本格化すれば、将来的なガスの安定供給に寄与でき、人々の安心感をより高められるはずだ。
エネルギー業界だけでなく、AIに関心を持つ企業からの注目度も高く、想像以上の広がりを見せた今回の挑戦。この経験を活かして、道を切り拓く仕事がしたいと河合は目を輝かせる。情熱を傾けられる新たなチャンスと出会う日も、きっと近いだろう。

人のために人とともに未来に挑む
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EPILOGUE

人と一緒に何かを成し遂げようと思ったら、
ビジョンや目的を共有することが大事だと河合はいう。
河合自身、立ちはだかる壁を乗り越えられたのは、
この技術を実用化できたら絶対に世の中がよくなるという
Fracta社の信念に共感し、同じ熱量で動くことができたから。
スピード感や明確さ、彼らから多くを学んだという。

「どれだけ仕事に熱量を持てるかによって、成果が変わる」
河合の言葉は、これからを生きる君たちへのエールだ。