新型空温式LNG気化器
1. はじめに
日本国内のLNGサテライト設備で数多く採用されている空温式LNG気化器(以下「従来型AFV」と表記)は、連続運転の長時間化と信頼性向上に対する強いニーズがあります。これに応えるため、株式会社神戸製鋼所殿(以下「神戸製鋼所」と表記)では、新しい構造の空温式LNG気化器(以下「新型AFV」と表記)を開発・試作しました。東邦ガスでは、新型AFVの採用を見据えて神戸製鋼所と共同で実液(LNG)による実証試験を行い、優れた性能を確認したうえで、津LNGステーションに実機を採用しています。
2. 新型AFVの概要
新型AFVは、流速を速めるため伝熱管を小口径に変更し、さらに蒸発管内部にツイストテープ(伝熱促進体)を入れ、LNGと蒸発管内壁との接触を強制的に促進させることにより、LNGの気化を安定させ、伝熱性能を高めた構造としています。また、外形寸法は従来型AFVと同等であり、リプレイスも容易にできます。従来型AFVと新型AFVの比較を表1に示します。
表1 従来型AFVと新型AFVの比較(1t/hユニット)
従来型AFV | 新型AFV |
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蒸発部並列管方式 |
上下屈曲管方式 |
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3. 実証試験概要
当社津LNGステーションに新型AFVの試作機(1t/h × 1ユニット)を設置し、連続運転性能、熱量変動等を確認するための実証試験を行いました。
実証試験項目を表2に示します。
表2 実証試験項目
試験項目 | 試験内容 |
---|---|
連続運転試験 | 4.0h運転(部分負荷、100%負荷) 出口ガス温度と大気温度の差が10℃に到達するまで長時間連続運転(100%負荷のみ) |
断続運転試験 | 2.0h運転(100%負荷)→2.0h停止→2.0h運転(100%負荷) |
負荷変動試験 | 2.5h→1.5h(部分負荷→100%負荷) (100%負荷→部分負荷) |
4. 実証試験結果
(1)気化能力
連続運転試験にて100%負荷運転を実施し1t/hの気化能力を確認しました。また、熱電対を伝熱管に設置して温度測定を実施した結果、新型AFVは部分負荷時、100%負荷時のいずれの場合も、伝熱管後流に向かって温度上昇し、前流と後流の温度逆転現象は発生ないことを確認しました。
(2)連続運転性能
連続運転試験結果を表3に示します。新型AFVは、従来型AFVと比べて気化ガス出口ガス温度の低下が少ない結果となりました。新型AFVを長時間連続運転した結果を図1に示します。気化ガス出口ガス温度と大気温度の差が10℃に到達したのは運転開始10時間後であり、従来型AFVに比べ大幅に連続運転できることを確認しました。
2.5h後 | 4.0h後 | |
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新型AFV | △4.1 | △4.6 |
従来型AFV | △10.8 | △14.6 |
表3 連続運転試験結果(同時運転比較)(気化ガス出口ガス温度と大気温度の差)(℃)
(3)熱量変動
100%負荷連続運転および負荷変動運転(部分負荷→100%負荷、100%負荷→部分負荷)における熱量変動量を表4に示します。新型AFVの熱量変動は、従来型AFVに比べ非常に小さく、特に100%負荷連続運転時では熱量変動がほとんどありませんでした。
100%負荷 連続運転 |
部分負荷 ↓ 100%負荷 |
100%負荷 ↓ 部分負荷 |
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新型AFV | 0.0 | +0.1 | -0.2 |
従来型AFV | ±0.2 | +0.8 | -0.6 |
表4 熱量変動量(MJ/Nm3)
(4)運転中の伝熱管ひずみ
従来型AFVは、蒸発管上部マニホールド部で最大4.0×10-3程度のひずみが発生しますが、新型AFVは、100%負荷運転時における耐圧溶接部の最大ひずみは1.345×10-3であり、目標値2.0×10-3以下となることを確認しました。
(5)圧力損失
新型AFVは、伝熱管の口径変更と蒸発管内部のツイストテープ挿入の影響で、表5のとおり従来型AFVと比較し圧力損失が大きくなります。
設計値 | 測定値 | |
---|---|---|
新型AFV | 0.10以下 | 0.07 |
従来型AFV | 0.05以下 | 0.03 |
表5 100%負荷運転時の圧力損失(MPa)(運転圧力1.0MPa時)
5. 新型AFVの特長と効果
実証試験の結果、新型AFVは従来型AFVと比較し、以下のような優れた性能を保有しています。
- 連続運転時間が大幅に延長できる
- 定常運転における熱量変動が小さい
- 運転中における溶接部の熱歪が小さく設備の信頼性が高い