開発担当者インタビュー #05
東邦ガスでは、「分散型エネルギーシステムの普及拡大」という東邦ガスグループビジョンのもと、ガスコージェネレーションシステム(以下ガスコージェネ)の技術開発に取り組んでいます。「エネファーム」や「エコウィル」といった家庭用の小型タイプから、大規模工場で使用する数万kWの大型製品まで、バリエーションは多岐にわたります。その中で、2015年4月に発売開始した新製品「450kW高効率ガスコージェネ」が、出力400kW級のガスコージェネとして世界最高クラスの発電効率を実現。技術研究所の谷口さんに、開発のプロセスやガスコージェネに懸ける想いをお聞きしました。
省エネや環境保全に役立つエネルギーシステム。
ガスコージェネとは、クリーンな都市ガス(天然ガス)を燃料とし、ガスエンジンやガスタービン、燃料電池を動かして発電するエネルギーシステムです。その際に出る廃熱を使って蒸気や温水をつくり、生産プロセスや給湯、冷暖房などに活用することができます。エネルギー利用効率が優れたシステムとして注目されており、近年は電力セキュリティの確保の観点からもニーズが高まっています。
私が開発に携わっているのは、病院や商業施設、オフィスビル、工場などに導入されているガスコージェネです。従来機の「380kWガスコージェネ」が発売されたのは2005年。それから約10年の年月が経過しており、お客さまの声を受けた営業部門からもコージェネの効率向上やコストダウンを実現した新機種の開発が求められていました。そこで私たちのグループでは、三菱重工業さまに共同開発の実施を持ちかけ、2013年より開発に着手。「高効率なガスコージェネを実現し、今まで以上に幅広いお客さまに導入していただきたい」「さらなる普及促進をはかり、省エネルギーや環境保全に貢献したい」。そんな目標を掲げて開発がスタートしました。
卓越した高効率を実現した、燃焼最適化へのアプローチ。
満を持して発売した新製品は、出力400kW級のガスコージェネとしては世界最高クラスの発電効率42.0%、総合効率81.5%※1を誇ります。この高効率化を実現するために、最も時間を費やしたのが燃焼の最適化です。簡単にいえば、いかに効率よくガスエンジンを動かすかが課題となります。まずは、ガスエンジンの燃焼状態を正確に把握するところから始まりました。
燃料ガスと空気の混合気が燃えたときのエンジン各部の温度や排気ガス成分などを入念に計測。さらに、燃焼室の圧力を計測するセンサを仕込んで、圧力の変化から直接目で見ることのできない燃焼状態を把握。そのデータをもとに、混合気の圧縮比や燃焼室の形状、バルブの開閉タイミングなどを一つひとつ解析し、最適化していきました。
もちろん、ガスエンジンだけ改良すればよいわけではありません。高効率を得るための水冷ターボチャージャや、発電機の性能を向上させる必要があります。それぞれシミュレーションを行って目標達成に必要な条件を推定し、設計の最適化を繰り返しました。
さらに、燃料ガスと空気の混合気を冷却し、混合気密度を高めるためのインタークーラ(廃熱を回収するための熱交換器)を、従来品の1段から2段に増設。以前は捨てられていた熱を有効活用することで、総合効率を81.5%まで高めることができました。
こうして、同じ出力クラスで世界最高クラスの発電効率を達成できた時は、「地道に積み重ねてきた努力がようやく実った」と実感することができました。同時に、NOx(窒素酸化物)の発生を抑える燃焼状態を導き出すことにも成功。低NOx化によって、排気中のNOxを低減するために後処理を行う脱硝設備が不要※2になりました。また、従来品では別ユニットにしていたエンジン補機類をパッケージ壁面に搭載し、オールインワンパッケージ※3に改良したのも大きな進歩だと思います。パッケージ内のレイアウトを見直すことで大幅にコンパクト化し、設置スペースを従来品の約20%以上削減することができました。
- ※1 回収した熱をすべて温水として利用する「全温水回収仕様(SGP M450-W)」の場合。回収した熱を温水と蒸気として利用する「蒸気・温水仕様(SGP M450-S)」の場合は、80.5%。
- ※2 設置する地域によって規制値が異なり、脱硝設備が必要となる場合もあります。
- ※3 回収した熱をすべて温水として利用する「全温水回収仕様(SGP M450-W)」のみ。
低コストや省スペースを強みに、さらなる普及を目指して。
10年の時を経て進化を遂げたガスコージェネは、高効率化や脱硝設備の省略に加え、従来機の「380kWガスコージェネ」をベースに450kWへの高出力化も実現しています。これらにより、イニシャルコストの削減、ランニングコストメリットの増大が可能となり、従来品と比べて投資回収年数を短期化できました。設置スペースもコンパクト化したので、今まで以上に幅広い施設で活用していただけることを期待しています。また、新規技術、省エネルギー性等において優れたコージェネを表彰するコージェネ財団のコージェネ大賞において、平成27年度の技術開発部門 特別賞を受賞できたことは、今後の普及に一層の弾みになるものと考えています。
今回の共同開発では、当社から提案した基本コンセプトを元に、三菱重工業さまにエンジンの要素試験、発電機を含めたパッケージ全体の設計をお願いし、私たちのグループは試作機を用いた性能確認試験、耐久試験の実施とシステム評価を担当しました。ガスコージェネの運転データを緻密に解析・評価し、さらなる改善ポイントを提案できたのは、当社がこれまでさまざまなコージェネを開発してきた経験があったからこそだと思います。また、営業やメンテナンス担当者と連携し、お客さまの要望や現場の状況を聞くことができるのは、開発面でも大きなメリットになります。ガスを扱う会社でありながら、こうして最先端の機器開発に携わることができること。そして、会社や業界の歴史に残る結果を残せたことは、技術者としての大きな喜びです。これからも効率の向上をはじめ、さらなる商品性改善に向けた開発を進めていきたいと考えています。
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