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サステナビリティ

トップメッセージ

代表取締役社長 増田 信之

災害対策の継続、コンプライアンス重視

 まず始めに、本年の元旦に発生しました能登半島地震により被害に遭われた皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。 当社は、地域のエネルギー供給を担うインフラ事業者として、日頃から「安全・安心、安定供給の確保」に取り組んでおり、都市ガスの製造設備やガス導管の供給設備などの対策に加え、災害時には、まずは迅速に復旧にあたることのできる体制を整備することが必要との考えのもと、地域の行政機関と包括連携協定の締結を進めています。 当地域は長らく南海トラフ地震の発生リスクが懸念されていますが、それゆえに、災害時にもお客さまのくらしとビジネスを守ることができるよう、万全の対策を継続しています。

 また、本年3月、家庭用都市ガス等の供給、ならびに再生可能エネルギーの固定価格買取制度による買取期間満了後の電力に関して、公正取引委員会から警告を受け、 大口需要家向け都市ガスの供給に関して、独占禁止法に違反する行為があったと認定されました。ステークホルダーの皆さまには多大なるご心配、ご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。 当社は、本件を厳粛かつ真摯に受け止め、再発防止策を徹底することで、皆さまからの信頼回復に努めてまいります。

環境変化への柔軟な対応

 足元の当社を取り巻く環境は、カーボンニュートラルの進展をはじめとし、電気・都市ガス事業の小売全面自由化、原燃料の調達環境の変化、地政学リスクの高まりなど、日々不確実性が高まるとともに、その影響度も大きくなっています。 しかし、創立から100年以上経過する当社の歴史の中で、大きな環境変化はこれまで幾度も経験してきたことです。リスクに対する健全な危機意識を持つ必要はありますが、新しく飛躍していくチャンスととらえ、挑戦していく気持ちが重要だと私は考えています。 例えば、カーボンニュートラルの進展につきましては、もちろん将来的には都市ガス需要に対してマイナスの影響が発生することも想定されますが、トランジション期においてはクリーンなエネルギーである天然ガスが再注目される絶好の機会であり、他の化石燃料からの燃料転換や、 当社の技術力を活かした省エネ提案、エネルギーサービス・エンジニアリングといった事業規模の拡大につなげていくことが可能です。 不確実性が高い時代だからこそ、当社グループが生き残っていくためには、我々が時代に合わせて変化していかなければならないという気持ちで、環境変化に柔軟に対応してまいります。

2023年度の振り返りと2024年度の展望

 2023年度は、都市ガス販売量につきましては、引き続き需要開発を進めましたが、家庭用は当地域の冬場の気温が高めに推移した影響が大きく前年に対して減少、業務用につきましてもお客さま先の生産設備の稼働減少等に伴って減少となりました。 収支につきましては、ガス販売量の減少に加え、原料市況が比較的落ち着いて推移したことから販売価格も減少し、前年に対して減収減益とはなりましたが、需要開発の成果や効率化による固定費の削減に加えて原材料費と売上高の期ずれ差益もあり、高水準の利益を確保することができました。

 2024年度は、気温が平年並みで推移するという前提ですが、ガス販売量は家庭用は対前年で増加し、業務用は引き続き省エネ影響等の個別要因が想定されますが需要開発や一時的な生産稼働減が戻ることで前年並みを想定しています。 収支につきましては、原材料費と売上高の期ずれ差益が縮小することもあり減益となりますが、概ね、現時点における当社利益の実力値に近い水準となる見込みです。

 なお、株主さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまからは、電気事業に関する高い関心を寄せていただいておりますので、この場を借りて私の考えをお伝えいたします。当社は電気事業を2016年度に開始し、着実に販売量とお客さま数を拡大してきました。 一方で、収支につきましては、需給逼迫や、2022年度からはロシア・ウクライナ紛争等に起因した市場価格高騰による調達面の影響を大きく受け、なかなか利益に貢献できていないという状況が続いています。 しかし、電気事業は、当社がグループビジョンで掲げた戦略事業の柱となっていくものであり、2023年度にはLPG事業のお客さま数を初めて上回ったことや、都市ガスとのセット提案によるコア事業の収益維持という観点でも、今後ますます拡大余地があり、かつ重要な事業になってくると考えています。 2024年度につきましては、赤字解消まで見通せるところまできましたが、次のステップとしては、当社が利益規模を拡大していくうえでの牽引役となるまでに成長させていくことが必要です。 そのために、「収支の安定化・改善に資する調達ポートフォリオの構築」、「自社電源保有の検討」、「お客さまのニーズ多様化に応えることができるような料金・サービスの拡充」に取り組んでまいります。

中期経営計画の進捗状況

 現行の中期経営計画は、2022年度から2025年度までの4年間を期間とし、グループビジョンで掲げた2030年代半ばに目指す姿の実現に向けた第一ステップとして位置づけたものです。 4つのテーマとして「カーボンニュートラルの推進」「エネルギー事業者としての進化」「多様な価値の創造」「SDGs達成への貢献」を掲げ、当社の新たな成長に向けた道筋を確立するため、私自身が先頭に立ち、変化に挑み、グループ一丸となって挑戦を牽引していくという気持ちで取り組んできました。

 中期経営計画の2年目となる2023年度は、2025年度までの目標としていた都市ガス・LPG・電気事業の合計のお客さま数300万件を前倒しで達成することができた1年となりました。また、都市ガス事業につきましては、全面自由化後で初めて前年に対してお客さま数が増加しました。

代表取締役社長 増田 信之

2024年度につきましても、2025年度断面での経営目標として定めた連結経常利益250億円について、実力値ベースで前倒して達成していく計画です。このように、中期経営計画で定めた目標に向かって順調に歩みを進められているのは、根底には、中期経営計画の達成に向けた強い挑戦の意識が社員の中に醸成され始めているからだと感じています。 さきほども述べましたが、カーボンニュートラルの進展や他社との競争が激しくなっていく中で、マイナス面にのみ着目するのではなく、リスクをチャンスと捉え、挑戦していく気持ちが必要です。私は、当社社員の特徴である真面目で責任感が強いという特徴はとても重要だと考えておりますが、加えて「挑戦に前向き」という要素を新たに刻むため、社員とのミーティングや懇談の場を通して、何度も私自身の想いを伝えてきました。その成果が少しずつ表れているのではないかと感じています。

カーボンニュートラルに向けた取り組み、戦略事業の拡大

 中期経営計画に沿った取り組みにつきまして、2点ほど紹介させていただきます。まず1点目は、4つのテーマのうち「カーボンニュートラルの推進」に関する取り組みです。当社はカーボンニュートラルに向け、ガス自体の脱炭素化と水素の普及拡大に関する検討を両にらみで進めています。 ガス自体の脱炭素化につきましては、当社の資産であるガス導管網を引き続き利用することができるe-methaneの導入に最も期待しています。国内外のパートナー企業と連携した案件発掘や検討を進めており、2030年に米国から日本へのe-methane輸出を目指す検討を開始していることや、本年の5月には愛知県の知多市と連携し、バイオガス由来のCO2を活用したe-methane製造実証を開始し、国内で初めて都市ガス原料として使用しています。また、水素につきましても同じく知多市の当社知多緑浜工場に天然ガスを原料とした水素製造プラントを建設し、本年6月から水素の製造も開始しています。 当地域はモノづくりの集積地でもあり、将来訪れる可能性のある水素社会に向け、お客さまが不便なく水素をご利用頂けるよう水素サプライチェーンの構築に取り組んでいきます。このように、一歩ずつではありますが、将来のカーボンニュートラルに向けた取り組みを着実に進め、ステークホルダーの皆さまの不安を期待に変えていくことが私の役割だと考えています。

 2点目は、「エネルギー事業者としての進化」「多様な価値の創造」の双方に関連する戦略事業の成長についてです。都市ガス事業やLPG事業といった当社にとってのコア事業は、将来的な人口減少や省エネの進展もあり、需要開発は進めていきますが、これまでのように右肩上がりの 成長は見込めません。そのような中、今後の当社の利益規模拡大を牽引していくのは、電気、海外エネルギー、カーボンニュートラル支援、エネルギーサービス・エンジニアリング、くらし・ビジネスサポート等の戦略事業になります。 これまで、当社の利益構成はコア事業が大半を占めていましたが、海外エネルギーを中心に徐々に戦略事業の規模が拡大してきています。くらし・ビジネスサポートにつきましては、既存のエネルギー事業と親和性が高く、都市ガス等のお客さまアカウントを活用して、食・住・健康に関するサービスを提供しています。 今後も新たなサービスを拡充し、お客さまの利便性を高めていきますが、利益を稼ぐ事業とするためにはもう一段の工夫が必要です。今後も成長の源泉となる戦略事業への投資を進めていく中で、本年度から社内の投資管理指標として導入したROICも活用しながら、採算性にも強くこだわってまいります。

株主還元、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について

 株主さまへの還元につきましては、本年3月に取得額の上限を100億円とする自己株式の取得を公表し、7月には上限を300億円に拡大しました。中長期の利益水準に加え、自己資本の最適化も踏まえ、当社がこれまでに実施してきた中で最大の金額規模としています。

 さらには、昨年から検討を進めてまいりました資本政策についても、4月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」という形で開示し、資産効率の向上、適切な資本構成、PERの向上という3点からPBR向上に向けた取り組みを示させていただきました。 今回の公表内容については、ステークホルダーの皆さまから概ね前向きな評価をいただいており、当社の変化に驚かれることもありますが、資本市場から求められる資本効率と当社の現状とのギャップをあらためて見つめ直し、そのギャップを埋めていくための策を取締役会等で議論を尽くした結果です。 ただし、重要なのは、掲げた方針に即して具体的な道筋を描き、着実に実行していくことであり、ひきつづき、資本市場との対話を続けながら、あるべき姿の実現に向けて進んでまいります。

代表取締役社長 増田 信之

2024年8月