03伊勢湾岸パイプライン共同敷設プロジェクトプロジェクトチーム発足

PROJECT MEMBER プロジェクトメンバー

桑原 元希KUWABARA GENKI

供給管理部
伊勢湾幹線プロジェクト
(現 導管保全部内管保全センター)

2007年4月。前年に計画が発表された1つのビッグプロジェクトが動き出した。東邦ガスの四日市工場および中部電力の川越火力発電所と、両社が共同で運用している「知多地区LNG(液化天然ガス)基地」間をパイプラインで結ぼうというものだ。これにより中部電力は火力発電所への燃料供給信頼度の向上、東邦ガスは都市ガス供給の安定性向上が図れるというメリットがある。 着工前にすべきことは設計と地元折衝。東邦ガス側で集められたのは桑原ら3名で、いずれも供給本部内で輸送導管の建設に携わった経験を持つメンバーたち。当時、桑原は四日市工場と四日市供給所とを結ぶ三重幹線工事を担当しており、“最後まで見届けたい”という気持ちと、三重幹線の隣で始まる新たなプロジェクトにチャレンジする期待の両方を抱えてのスタートだったという。

発注先の選定

桑原たちが最初に取り組んだのは施工会社の選定だ。伊勢湾の海底下にシールドトンネルを築造するルートや大きさ、強度、そのトンネル内に敷設するガス導管の強度などの工事仕様を定め、大手ゼネコンやパイプラインメーカーに対して技術提案方式の入札を行うのだ。
入札に参加したのはゼネコン10社以上とパイプラインメーカー3社。2007年6月から提案内容や見積金額の確認、比較検討、工数査定などを行うことで発注予定先を選定し、さらに発注予定先との設計協議を経て、正式に発注できたのは2008年春だった。
時を同じくして待っていたのは、地元との折衝や許認可申請手続き。東邦ガスが担当するのは川越火力発電所と四日市工場を結ぶII工区(約5.5km)だ。

地元の理解に向けて

2007年秋頃から、桑原は地域の自治体や企業への工事説明へと精力的に動き出した。プロジェクトの紹介自体は数年前から行っており、今回の目的はまもなく着工を迎えることのご案内と工事に際しての懸念払拭。例えば、漁業関係者にとっては海底下とはいえシールドマシンで地盤を掘削するため漁獲量の減少につながらないか、周辺企業にとっても掘削土の搬出で大型車両の往来が増えることによる影響がそれぞれ気になるところ。特にII工区では緑地や道路などの港湾施設を間借りして発進立坑を築造するため、港湾管理者を始めとする埠頭内企業との合意形成や着工許可取得は欠かせない。
竣工時期を見据えると着工を遅らせるわけにもいかない。他企業との企業文化の違いに戸惑いながらも、桑原は懸命に駆け回った。“無事に認可を得た時は肩の荷が下りた気分だった”と桑原は当時のことを述懐している。

発進立坑築造工事開始

知多・川越・四日市の各地点で、地表から所定の深さ(川越・約46m、知多・約44m、四日市・約41m)まで立坑を掘削していく。立坑とは掘り始めの位置までシールドマシンを下ろすためにつくる垂直の坑道のことで、材料や土砂の搬出にも利用される。
当時、桑原は四日市側の立坑築造工事の現場管理として工事にも携わっていた。彼の頭の中は次のステップであるシールド掘進時の掘削土をどう処理するか、シールドマシンが途中止まってしまった時はどうすべきかなど、リスク想定とその回避方法のことでいっぱいだったそうだ。

シールド掘進工事で独自の技術力を発揮

立坑築造後、シールドマシンを用いて伊勢湾の海底下を掘削。トンネルを築造していくのがシールド掘進工事だ。海域部の環境に影響を与えないよう、また、地震時の挙動が懸念される液状化層や将来的に自然圧密沈下の恐れのある軟弱粘土層を回避するなど、設計段階でも十分考慮したが、工事段階でも細心の注意が払われた。
また知多~川越間のトンネル築造では双方の発進立坑地点から掘削を行ったため、接続が難しい。川越、知多側の進捗が異なる場合に備え、どちらのマシンが先着しても受入・貫入が可能となる工法を採用した。マシン同士の間隔が50mまで近づいた段階で、地中接合に向けて計測を開始し、磁気センサーで相対位置を確認しながら高精度での接合を成功させている。

困難の連続!配管工事

さらに次の段階であるシールド内の配管工事でも苦労は続く。完工したトンネル内に配管を施工していくのだが、川越と知多の接合地点までは約6km。施工管理などの業務ではこの間を毎日歩かなくてはいけない。しかもII工区のシールドは内径が2m。足場などを含むと実質の高さは1.6mほどで、中腰の姿勢で行き来をしなくてはいけなかったのだ。
加えてガス導管同士を接合する溶接箇所に不具合がないかをチェックするフィルムの総数は約5,000枚。溶接欠陥はガス漏れにつながるだけに、毎日が真剣勝負そのものであった。

工事完了~効果の最大限活用へ

工事の最終段階はセメントと砂を水でねったモルタルを、シールドトンネル内に充填して中詰を行う作業。その後、立坑を埋戻し、工事前の環境に戻して完了だ。
こうして約6年に及んだプロジェクトは幕を閉じ、東邦ガスのガス導管は2013年7月上旬にガス事業法に定める使用前検査に合格。9月には竣工式典と中部電力との竣工に関する共同プレスリリースが行われた。
今回のガスパイプラインの完成で期待される効果は、「三重地区の供給能力強化」「セキュリティの強化」「基地運営の柔軟性向上」の3つ。その実現に向け伊勢湾横断ガスパイプラインの運用の早期定着とさらなる高度化で、LNG400万トン体制の確立を目指していく考えだ。

ページトップへ