1. 研究/開発のねらい

人は、電気が使えなくなるような万一のときでも、火で料理をし、暖を採ることができれば、生きていくことができます。しかし、現代の子どもたちは、火の取扱い知識やスキルが低下してきています。
そこで、子どもたちと若者、親世代の「火」に関する知識やスキル、考え方を把握するため、愛知県下に在住の、20代の独身者と小学校高学年の子どものいる母親へのアンケート調査、また、学校教育の現状を把握するため、小中高等学校の学年主任若しくは家庭科教員へもアンケート調査を行いました。
その結果、子どもが成長過程において「火」と触れ合うことは、子どもの学習意欲や積極性、情緒を育んでいることがわかってきました※1

子どもが成長過程において「火」と触れ合うことの好影響

図1 子どもが成長過程において「火」と触れ合うことの好影響

一般に、子どもたちは、「火」に関する様々な知識やスキルを学校と家庭の両方から吸収し成長していきます。しかしながら、調査データを分析していったところ、学校では、火を扱うような調理実習を安全に運営していくには家庭での火の基礎教育が必要と考えており、一方、家庭では学校教育に期待しているという、「火の教育」の押し付け合い構造が見えてきました。
そこで、学校で「火の取扱いスキル」を習得し、家庭で実践できるようになり、良好な学習サイクルができるようになることを期待し、「火」の安全確認の定着を目指した「火の学びVR教材」を開発しました。

学校と家庭の「火の教育」押し付け合い構造

図2 学校と家庭の「火の教育」押し付け合い構造

2. 研究/開発の成果

学校教育における授業運営では、子どもたちの安全確保がたいへん重要となります。2017年の愛知県下368の小中学校・高等学校調査から、「火」の扱いを教える上での困りごとは、調理実習運営の他、生徒自身の危機意識の欠如や経験不足であり、「火の原理原則の理解不足」が課題であることがわかりました。そこで、場所を選ばすどこでも、子どもたちが安全に楽しく、料理を通じて火の取扱いを学べるように、バーチャルリアリティ(VR;仮想現実)技術を活用したオムレツ調理を題材にした教材を開発しました。

VR体験中のCG画像(卵液をフライパンに入れる)

図3 VR体験中のCG画像(卵液をフライパンに入れる)

VR教材により、火の取扱いに関する重要ポイントの学習効果が高まるかどうかを明らかにするため、料理に不慣れな女子高生22名を対象に、VR教材体験後の学習到達度について、調理実習での実技を対象にルーブリック※2を用いて評価しました。
その結果、VR教材を調理実習前に体験したグループは、火の取扱いに関するほとんどの評価項目において、体験しなかったグループに比べ有意に高得点となり、安全な調理実習の運営及び生徒の火の取扱いスキル向上に一定の効果があることが確認できました※3(表1)。

表1 VR教材の効果速報(黄色ハッチング部は火に関わる評価項目)

評価項目 効果
①調理手順の確認
調理前 ②コンロ周辺の安全確認
③調理環境の確認
調理中 ④着火確認
⑤火力調整
⑥安全確認
⑦調理用具の正しい取扱い
調理後 ⑧安全確認
⑨盛付け
⑩総括

火に不慣れな子どもたちがVR教材を体験することで、自信を持って学校の調理実習に臨めるようになり、家庭で実践できるようになることを期待しています。

※1,3 当社と金城学院大学との共同研究成果

※2 ルーブリック:学習到達度を示す評価基準を評価視点と尺度で示した表。
 パフォーマンス課題を評価するために使われる。

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