1. はじめに

LNGによるガス製造設備の手動弁は、流体が低温であるため、低温に強いステンレス系の金属材料を使用しています。流体を遮断する弁シート部(弁体と弁座の接触部)も金属のため、弁を開閉するたびに摩耗が進行していきます。したがって、徐々に強く閉めていかないと流体の内漏れが発生します。
本開発では、従来の金属製弁体の代わりに低温領域でも著しい強度低下がない樹脂材料を弁体に使用するとともに、従来の低温手動弁の構造を改良することで、「繰返し使っても内漏れしない」、「従来手動弁の約2割の力で流体が遮断できる」等の優れた特長を持った低温手動弁を開発しました。

2. 開発品概要

  1. (1)弁の仕様:#300 SUSF304 長軸玉形弁(下図参照)
  2. (2)サイズ:1・1/2B、1B、3/4B、1/2Bの4種類
  3. (3)弁体材質:樹脂材料にカーボン繊維を添加し、摺動特性・圧縮強度を高めた樹脂材を選定

樹脂弁体は柔らかいため、金属の弁座面に良くなじみ気密性が高くなります。更に、弁シート部をテーパ状とすることで、小さい力で簡単に流体を遮断することができます。

開発品

開発品

3. 試験結果

  1. (1)材料試験
    材料試験は、23℃、60℃、-150℃の各温度条件下で圧縮試験等の機械試験を実施し、強度に問題ないことを確認しました。
  2. (2)性能試験
    性能試験は、耐圧試験、常温・低温(-196℃、液体窒素)弁座漏洩試験等を実施して、全ての判定基準を満足することを確認しました。
    特に、本開発品は、従来の金属製弁体と比較して約2割の力で流体を完全に遮断できることが実証できました。(常温弁座漏洩試験で漏れがゼロとなった締付け力は下表を参照)

    締付け力比較表

    試験項目 開発品 ※(樹脂弁体) 従来品
    (金属弁体)
    製作後 実証試験後
    常温弁座漏洩試験
    (圧力:5.47MPa)
    4N・m
    (約22%)
    4N・m
    (約22%)
    約18N・m
    (100%)

    ※従来品の力を100%とすると、約22%の力で流体の漏れなし合格となりました。

  3. (3)実証試験
    性能試験後にLNGローリ出荷設備の配管ドレン弁に開発品を設置し、約半年間(約900回開閉使用)の実証試験を行いました。
    実証試験期間中はトラブルもなく、試験後の性能試験においても、上表に示すとおり、製作後と同一の締付け力で流体を完全に遮断でき、耐久性が実証できました。
    性能試験

    性能試験

    実証試験

    実証試験

4. 特長

特長および効果
操作性の向上 従来手動弁の約2割の力で流体を遮断できるため、作業者の負担が軽減します。(ドレン弁・ベント弁に最適)
高耐久性 繰返し使用しても締切り性能の低下がなく、弁シート部の摩耗が殆どありません。
汎用性 常温から極低温まで広範囲の流体に使用できます。
メンテナンス費用の
削減
長期間使用できるため弁の分解整備費用が削減できます。
製作工程の削減 従来実施していた弁シート部の金属硬化処理がいりません。

5.おわりに

本開発品は、当社が主体となり、バルブメーカーの平田バルブ工業(株)と樹脂材メーカーのスターライト工業(株)の3社で共同開発しました。本開発品は、前記のとおり従来にない優れた特長を持つ樹脂弁体を使用した玉形弁で、平田バルブ工業(株)において従来品とほぼ同一価格で販売を開始しています。
今後は、玉形弁以外の他種類低温弁への適用検討を行うとともに、低温領域に限らず常温領域においても有効な技術であり適用範囲は広いため、弁全体への水平展開も検討していきます。

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