開発担当者インタビュー #02


社員がインタビューで語る技術開発の舞台裏

性能やデザインに優れた炊飯器が売上を伸ばしています。しかし、1200℃もの炎で一気に炊き上げる直火炊きのおいしさは、やはりガスでしか実現できません。本物志向の消費者が増え、高級炊飯器が売れる時代だからこそ、新たなガスの炊飯器が求められていました。こうした中、フルモデルチェンジに挑んで開発したのが、2012年秋に発売された「直火匠(じかびのたくみ)」です。入社1年目から開発チームに参加した藤田さんに、理想のおいしさを形にするまでの試行錯誤やプロセスをインタビューしました。

ガス炊飯器に、革新を。


2012年秋に発売された
直火匠(じかびのたくみ)

ガス炊飯器で炊いたごはん、食べたことはありますか? 私はこの開発に携わる中で、本物の火で炊いたごはんのおいしさを改めて実感しました。昔ながらの「かまど」で炊いたごはんのように、お米の一粒一粒がピンと立ち、「粘り」「甘み」「香り」が際立ったごはん本来の味わい。それを再現するのが、今回担当したガス炊飯器『直火匠』の開発テーマでした。

電気炊飯器は、性能やデザインに特徴のある商品が毎年市場に投入され、おいしさを前面に出した高級炊飯器の売り上げが好調です。一方、おいしさに定評のあるガス炊飯器については、平成3年に『直火匠』の前身となる『αかまど炊き』が発売されて以来、フルモデルチェンジされていませんでした。ガスでごはんを炊くとおいしいと認識しているお客さまは多く、ガス炊飯器をお使い頂いている方には「次に買い替える時もガス!」というこだわりを持っている方が多いのです。

そんな中で、ガス炊飯器の魅力を市場に発信し、新たなお客さまを発掘する新商品の開発に取り組みました。直火炊きならではのおいしさと、従来のガス炊飯器のイメージを一新するスマートなデザイン、誰でも使いやすい操作性。これらを兼ね備えた画期的な炊飯器を目指しました。

“おいしい条件”の模索と、その味を実現する炊飯技術の開発。

「直火匠」の開発は、東京ガスさま、大阪ガスさま、リンナイさま、そして当社の4社開発体制で行われました。私は入社してすぐ、開発メンバーに加わり、おいしさ評価のためのデータ収集や取扱説明書の制作に携わりました。今回の開発における一番の狙いは、炊飯器史上、最高のおいしさを叶えること。しかし、「おいしい」と感じるごはんの性状は、個人の好みによって異なるため、多くのお客さまが好む炊き上がり条件を決めるのが難題でした。まず判明したのが、炊きあがりの硬さが、個人個人のおいしさ評価に大きく影響しているということ。それぞれご家庭で食べ慣れた味が異なるため、開発者の中でも意見が割れて、なかなか仕様が決まらないことも…。東日本は硬め、西日本は柔らかめと、地域で好まれるごはんの硬さが違うのも驚きの発見でした。

そこで、実際に食べて評価する官能評価はもちろんのこと、もう一度「ごはんのおいしさとは何か?」を見つめ直してみました。ごはんの甘さに起因する還元糖値や粘りといった物性値の測定を駆使し、おいしい条件の絞り込みを行っていきました。まずは自分の舌で評価するために、試作品が仕上がってはごはんを炊き、食べ比べを行う日々の繰り返し。初めは味の違いがわかりませんでしたが、徐々にレベルが上がり、今ではベテランの評価結果と一致するようになりました。その結果、より多くのお客さまに好まれる条件を見つけ出すことができ、それを物性値で証明することができました。また、硬さや粘りなどの嗜好はお客さまによって異なるため、ごはんのもちもち感やおこげの具合を調節できる機能を搭載し、お客さまが自分好みにカスタマイズもできるようにしました。

実験過程では、想定した物性値が官能評価結果と合わず、焦った時期もありました。当初は、ごはんの中のでんぷんが口の中でアミラーゼによって分解された糖分も測定していたのですが、ばらつきが大きく官能評価で実際に感じる甘みと一致させることができなかったのです。この問題は、唾液と混ざる前…つまり、ごはんそのものの糖分を測定する方法に変更したことで、一致させることができました。

試行錯誤して導き出した理想のおいしさを炊飯で表現するために、ひたすらごはんを炊き、食べ比べて味覚を磨いたことが功を奏したと思います。火加減や蒸らしの時間、水の量などに関する様々な意見を反映し、よりよい製品を開発することができました。また、取扱説明書の制作においても、ガス炊飯器を初めて使うお客さまの視点で積極的にアイデアを出しました。イラストや図をわかりやすく工夫し、妥協のない仕上がりになったと満足しています。

開発のヒントは日常に。自分らしい発想や着眼点が大切。

さまざまなハードルを乗り越え、平成24年10月に発売された「直火匠」。初年度の販売数は、前年比の3倍以上という右肩上がりの売上を記録。うれしい気持ちとともに、もっと幅広い年代のお客さまにPRし、ガス炊飯の文化を次世代へ伝えていく必要性を感じています。そして、今回の開発で培ったごはんの評価方法を生かし、これからも品質向上やリニューアルに取り組んでいきたいと思います。

家庭用ガス機器の開発には、「こういう商品があったらいいな」「こんな機能があればもっと使いやすいのに」といった発想や、人とは違う着眼点を持つことが大切です。私はもともと料理が好きなこともあり、休日に雑貨屋さんや家電店を巡って新しい調理グッズをリサーチしたり、実際に購入して使ってみたりするのが楽しみのひとつ。開発のヒントや開発スキルを高める手がかりは、日常生活にもたくさん潜んでいると思います。

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