開発担当者インタビュー #04



10年の時を経て、表舞台に躍り出た商用水素ステーションへの期待。技術研究所 環境・新エネルギー技術グループ 三治 祐也

走行中にCO2を排出せず、“究極のエコカー”と呼ばれる燃料電池自動車。トヨタ自動車が2014年12月に一般発売を開始し、最近では街中でも少しずつ見かけるようになりました。東邦ガスでは、10年以上にわたって、都市ガスから製造した水素を燃料電池自動車に供給する水素ステーションの技術開発を進めてきました。そして2015年、市販の燃料電池自動車に充填できる商用施設「日進水素ステーション」がオープン。開発・運用に携わった三治さんに、これまでの取り組みの歴史と、建設や運用における苦労をお聞きします。

長きにわたる技術開発が生んだ、待望の商用水素ステーション。

東邦ガスで水素ステーションの歴史が幕を開けたのは2002年のことです。中部地方初となる水素ステーションを建設して以降、数々の水素ステーションの建設・運用を通じて、10年以上にわたって技術開発に取り組んできました。この間、燃料電池自動車の走行距離延長やガソリン車並みの燃料補給時間の実現に合わせて、水素ステーションも、より高圧で使用できる機器や水素冷却技術を導入し、短時間でより多くの燃料水素を自動車に補給できるようにしてきました。こうした最新技術を検証するため、2013年には豊田市の市街地に「とよたエコフルタウン水素ステーション」を建設し、乗用車だけでなく将来、普及が期待されるバスへの充填も実証してきました。また、自動車会社や自治体の方々と連携して、燃料電池自動車や水素ステーションを広く知ってもらえるように、イベントでの燃料電池自動車の試乗会や、水素ステーションの見学会を継続的に企画、実施しています。

こうした歴史を経て誕生した「日進水素ステーション」は、市販の燃料電池自動車への充填を目的とした当社初の商用水素ステーションです。私は、候補地の検討段階からプロジェクトに関わり、事業性の点から多くの交通量が見込める立地であること、用地代や人件費などのコスト削減の点から候補地を検討しました。その結果、名古屋市と豊田市を結ぶ幹線道路沿いにある既存の「日進エコ・ステーション」内に、水素ステーションを建設することを決定したのです。

蓄積されたノウハウにより、省スペース化と低コスト化を両立。

「日進水素ステーション」は、日本で初めて、既存のガソリン、天然ガス、LPガスを備えたエコ・ステーションに併設した水素ステーションです。既存のエコ・ステーションに併設するにあたり、限られたスペースで、安全で機能性の高い水素ステーションにするため、レイアウトを工夫する必要がありました。従来の技術基準では、水素設備と天然ガス設備を併設する際、発災時にお互いの設備に影響がないように、6mの距離を確保する必要がありましたが、設備間に障壁を設けることで、約半分の距離に短縮できるといった最新の規制緩和を取り入れたことで、無駄なスペースの少ないコンパクトな水素ステーションが実現しました。

当社初の商用水素ステーション「日進水素ステーション」

当社で初めて「オフサイト方式」を採用したことも、日進水素ステーションの特徴です。従来の「オンサイト方式」は、水素ステーション内に水素製造装置を備えているのに対し、オフサイト方式は他の場所で製造した水素を運んで使用する方式で、カードル(シリンダーを束ねたもの)で水素を搬送し、現地で圧縮・蓄圧・充填をします。燃料電池自動車の普及初期では、まだまだ需要は多くないので、使用する分だけ水素を運ぶ「オフサイト方式」にした方が、運営コストを抑えられると考えました。10年以上かけて蓄積してきた技術を生かしながら、いかにステーションの建設や運営の無駄をなくすか。私に与えられたこの課題に、今のベストを尽くして取り組めたと思っています。

今後のテーマは、安全・安定な運営と、さらなるコスト低減などの課題解決。

日進水素ステーションの完成に合わせて、最も注力したことが、運営開始の準備です。料金収集のしくみづくりをはじめ、運営を委託する作業員さんの訓練やマニュアル作成、トラブル時に迅速に復旧できるフォロー体制づくりなど、初の商用運営で手探りなことが多い中、社内の多くの関係部署や、水素業界の各社と連携をしながら、一歩一歩準備を進めていきました。2015年の5月15日、ついに運営を開始できた日には、大きな喜びを感じました。その後も、安全・安定なステーション運営を続けていくため、日々の運営のサポートや、設備のメンテナンスで頻繁に足を運んでいます。
オープン当初は、企業や自治体のお客さまがほとんどでしたが、最近では一般のお客さまも少しずつ増え、燃料電池自動車の普及が進んでいるという実感があります。10年以上、技術開発に取り組んできた水素ステーションが、ようやく日の目を見ることができたことは感慨深いです。

2016年には、当社が整備中の名古屋市港区の再開発エリア「みなとアクルス」に、新たな水素ステーションがオープン予定です。今回、日進水素ステーションの建設・運営で培ったノウハウを新たな水素ステーションでも生かしたいと思います。水素ステーションの建設・運営にはまだまだ多額なコストがかかるという課題は残っていますので、これまでの経験を生かし、さらなるコスト低減に向けた技術開発に取り組んでいきたいです。

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