開発担当者インタビュー #01


人間の快適 を科学的に検証することによって、ガス機器の新たな魅力を開拓。技術開発本部 商品開発部 開発グループ 係長 河原ゆう子

東邦ガスでは、ガスが得意とする調理や給湯、浴室などの設備機器を中心に、ユーザーの“五感に響く”ソフト研究を追求しています。例えば、「調理分野」ではガス炊きご飯やガス料理のおいしさ、「給湯分野」では入浴やミストサウナの効用、「暖房分野」では浴室暖房や床暖房の快適性について検証してきました。省エネ性と快適性を両立しながら、人の感覚を目に見える形で数値化し、そのメカニズムを明らかにすることで、新しい魅力づくりにつなげています。開発グループの河原さんに、その奮闘秘話をインタビューしました。

テーマを求めて、電車内のにおいに敏感に反応!?

ソフト研究には、主に2つの検討軸があります。ひとつは、新規商品のハード開発と並行してソフト面の開発を行っていく場合。こちらは、今何が流行っていて、どの年齢層のどの部分にフィットする機能を見つけ出していくかが課題です。もうひとつは、既存商品から新たな付加価値を発掘し、生活提案につなげていく場合。こちらは、新たなセールスポイントとなる部分を考え出していきます。

“新しいもの”を発信するには、やはりそれなりのインパクトが必要です。他社が先行している切り口では面白味がありません。「えっ!?」と関心を引きつけるようなテーマや話題づくりにはこだわっています。もちろん一時的な興味に留まらず、継続してガス機器を使っていただかなければなりません。ガス機器としてのベーシックな部分のクオリティも同時に磨く必要があります。

テーマを探すために、情報誌やインターネットから情報を収集したり、他社のデータや市場調査をチェックしたりと、日頃から世の中の動向やトレンドにアンテナを張っています。例えば、製品の脱臭効果に着目するきっかけになったのは、電車に乗っていて「くさい!」と感じた時でした(笑)。においの発生源が気になり始めると、「何とかうまく数値化する方法はないか?」「ガス機器を使って解決できないか?」と、つい思考が止まらなくなってしまいました。その時点で、すでに研究は始まっていると言えますね。

仮説づくりから実験・評価方法の模索、実証に至るまでの地道な研究。

日頃から自分の感性を敏感にしておくことも大切ですが、研究に結びつけるには不可欠なプロセスがあります。それは、目的に沿った"仮説づくり"と、効果を定性だけでなく定量的に"見える化"して、訴求可能なかたちにすることです。当社の技術開発によって製品化できた「美・白湯」(マイクロ気泡浴)を例に挙げてみましょう。本製品では、入浴によるストレス解消や健康増進、美容効果など、女性をメインターゲットとした付加価値を持たせることが目標になりました。そのためには、入浴による生体反応の変化を把握する必要があります。被験者にセンサーを取り付け、繰り返し入浴試験を行い、データとしてまとめていきました。

美・白湯の微細なマイクロ気泡

さらに、マイクロバブルは半導体などの製品洗浄に応用されており、「マイクロ気泡浴で、加齢臭の防止も可能なのではないか?」という新たな仮説が生まれました。加齢臭の主な原因はノネナール等のにおい成分です。これを入浴によってどのように除去・低減できるのか、検証方法について大変悩みました。あるベンチャー企業や大学の協力を得て、被験者による実験を長期間かけて実施。さら湯、入浴剤入りなどの対照条件を設定し、皮脂・擬似汚れの落ち方から、入浴後のにおい成分の経時変化に至るまで検討し、効果を明確化していきました。それはもう、まさしく人体実験! 汗にまみれた奮闘の成果と言っていいと思います(笑)。

人体に計測装置を取り付けて行う入浴試験の様子/体臭測定試験の様子/入浴前後のノネナールの変化

においは味覚や温熱感覚などとは違い、人によって感度や評価基準が大きく異なるため、臭気判定士の国家資格があるほど評価が非常に難しいもののひとつです。ごく少ない量でも強烈に感じるにおいもある。トリメチルアミンという魚の生臭さの成分もそのひとつです。脱煙脱臭(スモークオフ)グリルの技術開発では、排気口から出る煙を従来の81%カット、においは99%以上のカットを実現しました。しかし、数値上はそうなっても、実際に人が嗅いだ時は本当ににおわないのか? これもやはり確認しなくてはなりません。この時は、LDKを模擬した実験室で、30人ほどの被験者に協力していただき、確認しました。

最終的に、ガスの特長を活かしたアフターバーナの技術開発・採用によって、食欲をそそる“おいしいにおい”は残しつつも、におい物質を量的に減らすことに成功しました。私たちのソフト研究は、そうしたよろこびや楽しみを生み出す取り組みでもあると思っています。

脱煙・脱臭(スモークオフ)グリルの構造

研究者として正しい情報を提供し、社会貢献にもつながる開発を。

人にとっての快適や健康といったソフト研究は、噂や口コミで終わらせるのではなく、科学的に検証し、正しいデータを学会等で発表して公知化しています。これにより、商品の信頼性を高めることも私たち研究者の仕事です。そのために、大学の研究室や専門性の高い外部の公的研究機関と共同で取り組んでいます。人の感性は目に見えるものではありません。それゆえに、具体的なかたちにする面白さ、仮説通りの結果に至ったときのうれしさは、研究者の醍醐味です。

これから目指す姿は、世間のニーズやトレンドに合わせた情報発信だけではなく、自分たちが情報発信源になれるような存在になることです。誰にでもわかりやすく、インパクトがあり、省エネ性と快適性が両立できる研究計画を練っていくことが課題だと思っています。また、超高齢社会に対応するため、福祉面で貢献できるガス機器周辺のソフト研究に取り組んでいきたいです。

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